アニサキスはがんの部分に集まる習性を持っていることから、アニサキスなどの線虫を使ったがんの診断が可能になるかも?ということです。
アニサキスは線虫とも呼ばれ、幼虫の頃は細長くて肉眼でも見ることができる虫です。食中毒の原因としても指定されている小さい生き物ですが、がんの診断に役立つ可能性があることがわかったのだとか。
僅かな尿でがんを診断できる
アニサキスをそのまま飲み込むと胃の中で噛み付いて腹痛を起こすことがあります。
重症になると胃の中に入ったアニサキスを取り除くために、外科手術が行われることがあるのですが、手術で胃を開けてみると未発見の胃がん部分にアニサキスが集まっていたのがわかったです。
そのことから「線虫はがん細胞を嗅ぎ分けるのかもしれない」と考え研究が始まりました。
ちなみにアニサキスはイカの体表にくっついていることがあります。板前さんがイカのお作りを調理するときに細かく隠し包丁を入れるのは、アニサキス対策もあります。
アニサキスは体表の一部を少しでも切られると生存できませんので。
アニサキスががん診断に使われる・・のではない!
一部のニュースを見ると、まるで「アニサキスががん診断に使える」と誤解を与えかねない内容になっていますが、正確にはアニサキスではなく別の線虫が研究に使われています。
被験者の僅かな尿に反応し、がん細胞を持つ尿に好んで近寄るという線虫。
アニサキスも線虫ですが、動物実験に好んで使われる線虫はアニサキスではなくC・エレガンス(カエノラブディティス・エレガンス)と呼ばれる線虫です。
線形動物門双腺綱桿線虫亜綱カイチュウ(回虫)目アニサキス科アニサキス属に属する動物の総称
主に海中に存在しており、イカなどを生食した時にアニサキスが存在していた場合、食中毒になることがあります。
C・エレガンス
線形動物門双腺綱桿線虫亜綱カンセンチュウ目カンセンチュウ科に属する線虫の1種
土壌に存在しており、犬なみの嗅覚を持ってます。がん細胞に好んで近寄ることから、がんの診断に役立つと可能性があるということがニュースになりました。
アニサキスもC・エレガンスも『線形動物門双腺綱桿線虫亜綱』という部分までは一緒。
アニサキスはカイチュウ目(回虫目)で、C・エレガンスはカンセンチュウ目(桿線虫目)です。
でも回虫も線虫の一種として扱いますから、アニサキスもC・エレガンスも同じ線虫として分類されます。
早期がんにも反応する
C・エレガンスはがん細胞に好んで近づくのですが、理由はわかっていません。
しかし実験では、血液でがんを調べる一般的な検査方法『腫瘍マーカー』でのがん発見率が16%~25%の精度だったのに対し、C・エレガンスは95.8%の精度という、驚くべき数字をたたき出していました。
腫瘍マーカーは、がんがある程度進んでいないと発見できないようですが、C・エレガンスは腫瘍マーカー検査では発見できないような早期のがんにも反応するようです。
しかもわずかな尿で反応するんですから凄いですよね。
C・エレガンスにとって、がん細胞は生きていく上で非常に関係のある細胞なのかもしれません。
線虫のがん検査の実用化まで
実用化まで10年を目処に研究を進めているそうです。
C・エレガンスを使ったがん検査は数百円で済みます
患者側の負担もありませんから検査をする人が増えます。
さらに早期発見できるため治療にかかる費用も少なくて済みます。つまり国の医療負担の減少に大きく貢献します。
もっと早く実用化できるよう、国や団体がお金をつぎ込んで研究を早めるべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。